地面に伏した血糊でべたべたになった白い躯に、金属質の指先が触れていた。
触れるな、そう叫んだはずなのに、銀の髪の彼からはくぐもったうめき声しか発せられない。
当然だった。彼は無残な姿で地に伏していたのだから。
血に濡れた彼だったものと比べるとこちらの方が重傷に見えるが、まだ生命活動は維持できているようだった。
金属質の指先の持ち主は、瞳に感情の色を出さずに屍を拾い上げる。
重力に逆らえず紅い雫がポタポタと落ち行くと共に、損傷が見た目よりも激しいのか、ずるりと、片腕が地へと落下した。
筋肉繊維が見るも生々しく千切れて、ひどく彼の死を実感させる。

「ッ…ケ…を…はな…せ…ッ」

ちぎれた腕を金属質の指先の持ち主は軽く拾い上げると、銀の髪の彼に一瞥くれて、その場を去った。

「返…せ…ッ」


「ァ…ィツを…ッ、かぇ…せ…!」

銀の髪の彼は、幾分後に助けに来た仲間たちに手当てされ、一命を取り留め……数年の月日が流れた。



ファントム。



リゾットは荒々しく部屋を飛び出した。
『あれ』にも酷く腹が立ち、それでいて、自分にも苛立ちを覚えていた。
飛び出た部屋に居る『あれ』は、自分の望んだモノでも無い。
姿形が同じでも、『あれ』はどうしても望んだモノには見えなかった。
自室に戻って激しく壁に拳を打ち付ける。…悔しかった。
『あれ』に対して苛立ちを覚えてしまったこと。
自分の我侭に生命を与えてしまったこと。
だというのに、似るのは姿形ばかりで愛せ無かったということ。
鈍い音を立てて、壁に紅い染みを作った。

「コロッケ…」

愛していた…いや、愛している。
想い人が『死』してなお現在進行で続く愛は狂っている?
じんわりと拳に響く痛みに、リゾットは答えの無い問いに思いを馳せていた。
『あれ』を作ったのは、一介の科学者達だった。
血痕の一部から人間を作り出すという技術、人造人間の生成を以ってグランシェフへ売り込みに来た人間。
現国王、王妃は彼らの所業を認否人と責めたが、リゾットだけは違った。
彼の一存だけで、科学者達は国抱えになり、合法・非合法も無く人造人間を造り出した。
そうして、『あれ』は、生まれたのだ。
しかし、すぐに問題は発生した。
姿形は間違いなく愛しい人であるというのにどこか違う、何かが違う、魂が…違う?
そう、リゾットの望んだものは生まれなかったのだった。
科学者達は嘲う。
肉体を作るのが仕事、と言い切って嘲った。
結果など解っていたかのように。

「お前の代わりなど…いない…ッ」

それでも求めることしか出来ない自分はなんて無様なのだろう。
リゾットは自分を蔑みながらも、今も科学者たちに『あれ』を作らさせていた。
国を取り戻し、父と母をも取り戻し、すべて取り戻したはずだったのに…最後の最後で奪われた少年を。

「愛して…いるんだ…ッ、コロッケ…」

遺体さえ奪われなければ、諦めは付いたのかも知れなかった。

零れた涙を拭わずに、リゾットはベッドへと堕ちて行く――――





愛は哀で縛られたまま、一度見た現実を夢見ていた。




某サイトさんで人造人間ネタがあったからつい…(だって萌えちゃったから;;/ヲィ
そんなワケでこれは絵茶でお約束したとおりその某サイトさんに献上です(いらん
当初魔王王子ネタと気付かず書いたものですゆえ、設定が違ってますが…!
ぐちゃぐちゃな文でスミマセンです…(汗
ちなみにファントムはたしか幻影とか幽霊とかそんな感じの意味だったと…
バンキングが居なくなった世界を想定。シェンロンだって居なくなるし(汗