「いいだろう?」


そう言って、コロッケを抱きしめる。
意識下で、銀の髪が揺れていた。
本日、幾度目かの抱擁。
だが、コロッケは前から何度もそう言って抱きしめられたというのに、抱き返すワケでも無くただ呆然としていた。

別になんの感慨も無かった。
抱きしめられる事も、愛してると囁かれる事も、そしてその先にある行為も。
ちょっとの罪悪感と、一握の同情と、すこしの――



Clear dirt



そっと口づけを受け入れる。
舌に絡みつく熱は、先にある行為への余兆。
比較的気持ちの良い彼のキスは酸素不足と相まって、コロッケの躯の力を抜かして行く。
瞬きが甘くとろみを帯びるとやがてキスを止めて、首筋へとかじりついた。
あ…という声が聞こえた後、彼は満足そうにコロッケの肌から顔を離した。
出来た痕を確認すると、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべてぺちゃぺちゃと業と音を出して嘗め、彼の聴覚から刺激してやる。

「…意地わる…だ、お前…」

押さえられた両腕を無理矢理動かして、無駄だと分かっているのに今更とも思えるささやかな抵抗をしてみせた。
その行動が、相手を煽る事さえも経験上分かっている筈なのに。
深く繋いだ両手は、けして逃れぬよう逃されぬよう強く握られていた。
そのまま、抵抗も無かったように彼は段々胸の突起へと舌を這わせる。

「…ぁん…そこヤぁ…」
「さっきからお喋りが多いな…ぼうや。今日はそんなにイイのか…?」

言って、ガリっと胸の飾りを噛みあげた。

「いぁっ…!?」

悲鳴と嬌声が混じった声が彼の鼓膜を擽る。
軽く欝血した噛み痕は見るに痛いが、躯はそれに感じてしまっていたようで下部が熱を帯び始めていた。
年齢柄そんなに大きくはならないが、彼にコロッケの状態を知らせるには十分なモノだった。

「早いな…そんなに今日は感じるのか」
「ちが…ぁっ、そんなことぉっ…」

束縛されていた両手が離される。
馬乗りになった彼は、何をしようという色も見せず、コロッケを見ていた。
自由になった両腕で何気なく顔を隠した。
羞恥とかそういうモノは意識しなかった、ただ何となく。
もしかしたら無意識的な羞恥なのかもしれなかった。


「ふん…顔を見られたく無いのか…まぁ、勝手にさせて貰うが」

ひとりごちるようにいうと、コロッケのズボンごと下着を一気に下ろした。
腫れたようなそれは、確かにコロッケが感じてしまっている証拠で。

「随分立派になったモノだ…仕込み始めた頃は勃ちもしなかったというのにな」

舌を這わせて、口の奥へと加え込む。

「…な…っ…ぁん、っひ…ぁやだぁっ…へんに…なるぅっ…」

与えられた快感に耐えきれなったのか、顔を押さえていた手を使って彼の頭を離さそうと掴んだ。
青黒く長い髪がまだ幼い指先に絡むが、当然彼を拒み切れるワケもなく。
白い欲望がコロッケから放たれるまで、彼はそれを止めなかった。
彼は肩で息するコロッケを目下にして、多少強引に唇をあわせさせ、
飲み込まないで口に含んだままのコロッケの欲望を舌を使って渡し、飲み込むよう促す。

「自分の味はどうだ?」

眼前でニヤリと笑うと、彼はむせるコロッケを軽く抱きしめた。

「も…ゃだ…ぁ…」

コロッケは彼を押さえていた手で再度顔を隠す。
…が、今度は先ほどと違ってすぐに剥がされた。
交わる視線。
先にそらしたのは、コロッケで。
いまだに純粋な瞳は、明らかに動揺していた。

「なんだよぉ…」

飲み込みそこねたコロッケのそれが口端からこぼれている。
その年齢不相応の光景は、だが彼が思った以上に…妙にしっくりときていた。
彼は舌でコロッケの口まわりを嘗めとるとおもむろにまたコロッケの自身へと口づけた。
軽くふれるだけのそれは、微かな熱を生んで更にコロッケを困惑させていく。
ひくついたそこから溢れだした先走りの液を指に絡めてから、彼を受け入れる場所に染み込ませていく。
コロッケの反応を楽しみながら、彼は内壁を擦った。
あられも無い声が上がる。
指先はいつもより締め付けられていた。

「力を抜け。」

ぼそりと言い放った言葉の後に、小さな声で囁く。

「お前の身に今日何が在ったかなど聞いてやらん」

ひぁっ…と、艶のある悲鳴。
潤った瞳から、ぱらぱらと滴がこぼれる。
指を引き抜いて、自分の高ぶったそれを宛がう。
簡単には受け入れられなかったが、無理矢理貫いた。

「…愛してるっ…て、云われたんだ…っ」

不意に、コロッケが喘ぎ喘ぎ口を開く。
幼なさが残る、上等な喘ぎ声。

「…聞かないと云ったばかりだが」

無関心を装った彼はゆっくりとピストン運動を始める。

「…っ、ぃ…、ぉれのっ…独り…ごとだ…ぁ…からっ…!」

結合部がぐちゃぐちゃとうるさい中で、コロッケの声が響く。

「…すっ、ごぃ…まっ…すぐ…なぁ、っん…瞳で…あぃっ…して…る、
ぃ…っ…ぁん…ぉれの…んっ、ものにぃぁっ…なぁ…てくれっ…て…っ…!」
「それで?」

激しく腰を揺さぶりながら、彼は抑揚の無いような声で適当な相槌をうった。

「ぃ…だろ…って、おなじっ、ぁ…こと…された…」

律動を受け入れながら喋るコロッケは、快感に悶えているような…どうすればいいのか嘆いているかのようだった。

「そうか」

感慨もなく応えて、欲を解放する。
激しさをますピストン運動は、コロッケに何もかもを忘れさせた。


そうして、夜は更けていく。


『愛してるんだ…どうしようも、無い位に』
『ごめんね…でもオレはもう汚れるトコもないほど汚くなっちゃってるから、駄目だよ…』
『…お前は、どこも汚れてなんか…ッ』
『汚れが黒いとは限らないよ…だから見えるとも限らない』
『だったら…』


『オレが全部、キレイにしてやる』

――――――そして、また汚された。


コロッケが、その人と関係を持ったのは何時の頃からだったろうか。
つい最近のような、でもうんと昔からのような、イマイチはっきりしない。
確実なのは、銀の髪の彼と知り合う前だということ。
最初はお使いとか、ちょっとのお金と昼食が絡んだ関係で本当にそれだけだったのに、何時の日か、それは現在のような大金と大量の禁貨が絡んだ性欲処理へと変わった。
旅の足しになればと始めた小遣い稼ぎは、今…路銀の大半を占めて。
その出所に気付いたのは皮肉にも銀の髪の彼だけだった。
そして訊ねられ咎められ追い詰められ…挙句に告白され犯されたのだ。



彼はぐったりとしたコロッケの身体を持ち上げて、掻き抱く。
つけた覚えの無いうなじ近くの痕に口付けて、他の存在のニオイを消した。
意識が無いコロッケの紫色の髪を一度軽く撫でると彼は離れ、半透明に汚れた身体を奇麗にしてやって服を着せて。
自分の身体も奇麗にした後服を着て、荷物から大き目の皮袋を取り出し、コロッケの近くに投げ捨てた。
金属系の重いものが落ちる音、同時に彼は部屋を出る。



ギィィィ…という、立て付けの悪い扉の音が、明朝の静けさに響いた。