お前はいつも何かにおびえていた、俺とは違った怯え方。…必死に隠そうとして、それが逆に醜い。

俺はお前が嫌いだ…クラウド…お前は、俺に似すぎている。

「ちっ…。」

もやもやと考えるときりが無い、クラウドに対してもそうだが、昔の記憶が嫌にまとわり付いてくる。ルクレツィアや、宝条のこと…今はもう振り返っても何も出来ないと解っているのに…

「…さっきからどうした?長旅で疲れたか?」

クラウドが話しかけてきた。であった頃と同じ、淡々としているが冷たいわけでなく、仲間の事をよく考えている。

それが逆に遺憾だ。

「…俺に構うな。」

「ふぅ…お前はそれ以外に言葉を覚えてないのか?」

「…」

相手にさえしたくない。俺は…まだ勇気が無い。
「解ったよ…悪かったな…。今日はテントを張るからティファを手伝ってくれ。」

いつも俺との会話の最後はお前が身を引いてくれる。変に突っ込んでこられると、殺してしまいそうだ。
さっさとその場を離れてティファとやらの手伝いをする。別に嫌ではないが、こんな事をするのはほぼ初めてに近い、逆に違和感がある。

「…またクラウドに冷たくしてたでしょ。」

「急に何だ。」

あまり話した事もないのに、急に話しかけてきた。前々から何か俺に言いたげだったようだが、直接言ってきたのは初めてだ。

「…クラウドはいつも貴方を気にしているのに…その貴方はいつもクラウドに冷たいよね」

…女はこれだから困る…

「…お説教ならよそでしてくれ。」

こういうと大体逆上して来るんだ。

「…クラウドがここでテント張るって言い出したのも、貴方を配慮しての事なのよ?」

やっぱりな。

「…余計なお世話だ。現に俺は疲れていない。」

「・・・。何が貴方をそうさせているの?」

…何が…。そう聞かれたのは久しいな。ルクレツィア以来だ。でも、こいつに話しても意味が無い。

「…お前には関係ない」

「…そうね、いつもそういう言葉で逃げてるよね、なら、冷たくしている等本人には言ってあげてよね。」

ちょうどテントを張り終えたとき、ティファはそういった後、まきを集めているユフィのところへ歩いていった。
あんな言葉…久しぶりに言われたな…何が…

「…何が…?・・・。それは俺が弱いからだ…。」
ポツリと俺は言った。それは自分に対する戒めなのかもしれない。

「…弱い…?」

後ろの木陰からクラウドの声がした…。ティファのヤツ、初めからそのつもりだったのか。
…一番聞かれたくないやつに、一番聞かれたくない言葉を聞かれた…

「なぁ…お前が弱いってどういうことだ?…十分強いと思うが…」

…冷たくしている等本人には…か。そういえば、こんなにも仲間、というものと一緒にいたことはないな。その前に、仲間というものは初めて作った気がする。神羅のときは、同じ駒同士馴れ合っていただけだったからな。

もう良いだろう、俺…いや、ヴィンセント。

「俺は弱いさ。………俺はお前が嫌いだった。…それは、お前が昔の俺に似すぎていたからだ。」

「俺が…昔の…?」
きょとんとした顔が妙に似合っている。

「お前は必死に何かを隠そうとしている。隠し切れない気持ちを。そしてそれから逃げようとしている。…昔の俺もそうだ。」

「…。」

「だからいつも見ていて何か嫌だった。昔の俺を忘れたかったからな…だからお前と向き合うと、昔の俺を思い出して、消し去りたくて…殺したくも思った。」

「…殺したくも…。」
俺がクラウドの気持ちに気づいていたのと、殺したくも思われていたのにショックなのか、きょとんとしていた顔は一気に沈んでいた。

「でも、俺は初めからわかってたんだよ…それはお前が悪いわけじゃないってな。だからこそ、お前が近くにいると変に当たってしまいそうだったから…だったら、クラウドから俺に遠ざかってくれれば…と思っていたんだ。」

「…だから…。」
沈んでいた表情のまま俺を見つめる。その顔は、おびえてもいた。

「…な?俺は弱いだろ?昔の自分と向き合うのが怖くて、お前をさけ続けていたんだ。」
言いたい事はいえたのかもしれない。何かがスゥッと抜けていった気がする。

「…そんな事はない…。確かに俺は逃げている…それは、おれ自身にも解らないんだ。だから、どんなものか、まだいえないけど…。でも、ヴィンセントは今こうやって俺に全てを打ち明けてくれているだろ?それは、昔の自分と向き合ってるって事じゃないのか…?
…うまく、いえないけどな…。」

一生懸命に言っている姿は…決して醜くはなかった。
むしろ、いとおしく感じた。

「…ありがとう…。」

…クラウドを抱きしめる。それは、昔の自分を、受け入れて、そして。クラウドへの気持ちは、本当はこんなにも暖かいものだったと、今感じた。

「なっ…いきなりっ………。」

照れつつも、クラウドは小さく抱き返してきた。クラウドの体温が、心音が、俺から伝わってくるクラウドの全てが、今はこんなにも大切だ。

「…俺は勝手だな。お前を憎んだり、大切に思ったり…。」
…本当に勝手だ、本当なら、こうやって抱きしめる事さえ許されないだろうに。

「…そんなことはないさ。確かに冷たくされたのには嫌だったが、今は、…その、嬉しいから。」

その言葉を聞いて、より強く抱きしめる。クラウドもそれに答えるように、強く、抱き返してきた。

愛しい。こんなにもー…。

「…コホン。もうそろそろいいかしら、お二人さん。」

「「!!ティファ!!」」

…それに、皆…。

「別に良いけど、後にしてくれる?こっちはさっきから邪魔しないように気を使って、せっかく集めた食材目の前にして待ってたんだから、…早くご飯にしましょ。」

「…じ、じゃ、俺は水汲んでくるな…。」

クラウドはいそいそと俺から離れるなり川のほうへ小走りで去っていった。

「あ…。」

急に居心地が悪くなる。ティファが俺をにやりと見つめている。…そうだな。返せないカリを作ってしまった…。

「…。貴方の中の何か、解決できて、よかったですねぇ〜。」

「…か、感謝している。」

「ま、いいんですけどねー。ンフフ、」

「…ぅ。」




…俺には新たな悩みが出来た。

…女は、嫌いだ。




終わり。